柿渋の未来を拓く 第2回 講演会のご報告
~ 生産と利用の拡大への歩み ~
★全講演は「第2回講演会動画配信」でご覧になれます。★
平成27年10月27日(火) 柿渋・カキタンニン研究会は京都府の平成27年度地域力再生プロジェクト支援事業の交付金による支援と精華町の後援を受けて、柿渋の生産と利用に関する情報交換・意見交換と柿渋に関して一般市民の方々の理解を深めていただくことを目的とした市民講演会を精華町交流ホールで開催しました。
地元はもとより多くの多種多様な職種、職業の方々、延べ90名を超える参加者があり、交流ホールはほぼ満席となり大変盛況でした。
本講演会では柿渋・カキタンニンの生産と利用に関連した技術開発を目指した4つの課題について話題提供をしていただきました。
<司会:武田征士氏> <会場の様子>
最初に、北島 宣氏(京都大学大学院農学研究科)には「柿の甘渋と新品種の育成」と題して新品種育成の技術や問題点に関して講演していただき、今後の品種目標の提案もいただきました。
興味深い点は、育種効率を高めるために、甘・渋を判定するDNAマーカーが開発され、現在ではこのマーカーを活用して完全甘ガキの品種育成が行われている。今後このような技術を使って産業用原材料としての在来品種の形質評価をすることにより、今までにない新品種が生み出されることが期待できました。
<北島 宣氏> <甘・渋判定DNAマーカー> 続いて、京都府立大学大学院生命環境科学研究科から寺林 敏氏に「原料柿の大量生産を目指した養液栽培技術の応用」というテーマで話題提供していただきました。野菜や花卉で実用化されている養液栽培技術を使って、早く安定した柿渋の原料柿を生産する技術開発と問題点に関して話されました。
特に、柿の接ぎ木技術や挿し木技術での有効な方法や問題点、養液栽培を応用した今後の技術について詳細に説明され、生産者の方には興味深い情報が満載であったと思われます。
<寺林 敏氏> <養液栽培について>
3人目の演者としては、以前地元の山城郷土資料館で勤務されておられ、柿渋の製造・販売、利用に関する資料に大変詳しい横出洋二氏(京都府丹後郷土資料館資料課長)に、「畿内都市文化と南山城の柿渋」という課題で柿渋製造の歴史から現在に至る変遷について講演していただき、特に、この山城地域の柿渋は都市の伝統的な製造業の需要に応えており、こうした都市需要の重要性について詳しく述べられました。
<澁を搾る図> <山城の柿渋ラベル> 最後には、鹿児島大学名誉教授である松尾友明氏が「柿渋の魅力と将来性」という演題で、渋柿の渋み成分とは何か、柿渋とカキタンニンの相違は何かという話から柿渋の品質の向上や品質管理、それを踏まえた柿渋製品の製造を行うことが重要であること、さらに今後の魅力的な可能性について話されました。
<松尾友明氏>
4人の演者の講演後、総合討論や意見交換の時間を設け、参加者の方々とも十分に交流する機会を持つことができました。また、柿渋を利用した特徴的な製品に触れ、柿渋の良さや応用の広さを実感していただくための製品展示も行いました。
総合的に見て、幅広い市民の交流が実施できたと思われましたし、技術的にも非常に有意義な、楽しい講演会となったと思います。
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