第6回講演会 ご報告

第6回講演会「柿渋勉強会」の開催報告

 2019年7月15日に実施しました柿渋勉強会の報告です。
 今まで本研究会で実施しました講演会の多くでは、主に柿渋の新規の用途開発に注目した話題提供を行ってきましたが、改めて、柿渋の歴史的文化的側面にも着目したいと考え、今回は、柿渋の利用の中でも伝統工芸の分野に焦点をあてた勉強をする会を行いました。
 午後2時より、イオンモール高の原の4階こすもすホールをお借りして、柿渋の勉強会を実施しました。また、小規模な会とするために、開催の告知を会員の皆様へのネット配信とホームページでのお知らせのみにしました。結局、会員の方に加えてオープン参加の一般市民の方々もおられて、当日の総参加者数は、28 名でした。

 
 最初に、会長の松尾が、日本の伝統文化を陰で支えていた柿渋の実例として、
江戸期の画家、尾形光琳の紅白梅図屏風の作画に関して、川の金色が、金泥か金箔かどっちが使われているかという科学的論争がありましたが、結局、当時、柿渋による箔打紙が作られており、それを使うことにより現代から考えると予想以上の薄い金箔が作られて使われていた、ということを明らかにした論文があることを紹介しました。加えて、数々の浮世絵の版画の作成に、柿渋と和紙を使った、バランが利用されていたこと、着物の染色に柿渋を使った伊勢型紙が利用されていたこと、漆を使った工芸品の作成に柿渋を使った道具が必要であったことを解説しました。

 
 次に登壇いただいた、京都美術工芸大学非常勤講師、元教授である岩田 均氏には「工芸と柿渋~その魅力と復活の展望」についてお話ししていただきました。最初に、柿渋の魅力について、仕事と暮らしが一体化して生まれた伝統的な地域の特産品で、つまり、この地方の地域力、文化力、職人力が結晶化したものであることを説明されました。一方、明治維新以降の日本では、近代化、工業化が進み、中央集権的国家のシステムが確立されて、結果として、地域の諸資源が国家や大企業が管理・支配することになってしまい、地域力をそぎ、国が弱体化したことを指摘されました。改めて、地域固有の自然的・文化的資源を生かし、地域力を育む経済システムと職業的に自立した民衆(市民)が主体となった地域社会の構築が重要であること(分権自治)を力説されました。柿渋産業を1つのモデルとして、大企業に依存しない、地方・地域の特徴ある地場企業同士のつながりを回復させて、クラスター化してイノベーションを生み出す場を作りあげることが大切であると提言されました。過度な工業化ではなく工芸的なものつくりを中心に置くことが重要であると指摘されました。近代社会の反省も含めて大変重要な視点を教えていただいたと感じました。私も本研究会の会長として、けいはんな柿渋産業クラスターができることを願っております。

 
 次に、有限会社つるばみ きょうと工房代表の松原義美氏に「歴史から読みとる、黒柿の価値感」というテーマで話題提供していただきました。黒柿とは、柿の樹を材木として利用した時に白い幹の中に黒い模様が現れたものを指します。古来、貴重な材木として珍重されてきましたが、その中でも、「孔雀杢」は色も模様も孔雀の雄羽に似ており、日本の銘木の極とされているそうです。
  
松原氏は、鹿児島の屋久島杉材など希少な材木を後世に残すことに非常に情熱を持って活動されており、その1つとして、原木から製材と糸化する技術開発に挑戦されました。様々な苦労の中で、現在は黒柿の孔雀杢織や漆織などに成功されて、反物や着物を展示・販売しておられます。個人的には、開発エピソードやその姿勢の中には多くの学ぶべき点がありました。
 

 私個人としては、今後、黒柿や孔雀杢の誕生・生成に「カキタンニン」がどのように関与しているのか今後の科学的研究で明らかにされていくと大変面白いと思っております。それぞれ、活発な意見交換があり、大変有意義な勉強会になってものと感じております。

 最後に、柿渋には多種多様な日本の伝統的文化・生活を支えてきた遺産があり、日本遺産、無形文化財としての登録を目指す高い価値を待っています。
 今後も、行政や周辺の他の団体とともに、このような活動も積極的に進めていきたいと考えております。
 

第6回講演会 ご案内【終了】

講演会:柿渋勉強会のご案内
  主催:柿渋・カキタンニン研究会

柿渋・カキタンニン研究会は柿渋勉強会を開催することになりました。

今回は、柿渋の利用の中でも伝統工芸の分野に焦点を当てたいと考えております。
また、直接柿渋と関係はないかもしれませんが、黒柿の出現の魅力と不思議についても勉強してみたいと思っております。
参加申し込みは不要ですのでご興味がある方はぜひお誘い合わせの上、多数ご参加いただくようにお願い申し上げます。

■テーマ・講師:

1.「工芸と柿渋~その魅力と復活の展望」
     講演者 岩田 均様(京都美術工芸大学非常勤講師、元教授)

2.「歴史から読みとる、黒柿の価値感」
      講演者 松原 義美様 有限会社つるばみ きょうと工房代表

■日  時: 令和元年7月15日(月)  15時から1時間半程度

■参 加 費  :無料

■会  場:  イオンモール高の原4階 こすもすホール   ※現地集合
       住所:京都府相楽郡木津川市相楽台1-1-1
       近鉄京都線 高の原駅下車すぐ
       (電話:0774-75-2500)

※この後、会員の方向けには、 令和元年度総会 が予定されています。