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第3回 講演会を開催しました

柿渋ニューワールドへの扉を拓く!!」  第3回 講演会のご報告

~その魅力と課題、そしてエコ社会の再生へ~
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平成28年10月27日(木)に柿渋・カキタンニン研究会・国立国会図書館は、京都府の平成28年度地域力再生プロジェクト支援事業の交付金による支援と精華町の後援を受けて、柿渋の生産と利用に関した市民講演会および柿渋展示会を国立国会図書館関西館の大会議室およびアトリウムで開催しました。地元はもとより多種多様な職種、職業の方々、延べ118名の参にご参加いただきました。
   
このイベントでは、一般市民の方々に柿渋の理解をより深めていただくことを目的として大きく二つの新しい核を持つ会を実施しました。一つはより拡充しました柿渋展示会を併設して、参加者全員に講演の演題に関連する柿渋製品および商品を実際に見て、触れてもらって、講演者や作品・製品の作者と意見交換する場と時間を十分に設けたことです。
 また、柿渋の情報の収集と解析の重要性を認知するために国立国会図書館関西館との共同主催を行い、本図書館で長年蓄積されている情報の質と量や利用の仕方についても合わせて参加者、関係者全員で勉強する機会を作りました。このことは一般市民の方々の幅広い理解を深めるだけなく、柿渋関連産業に携わる方々の今後の活動をより一層高めることに役立つと期待されました。

本講演会では柿渋・カキタンニンの生産と利用に関連した技術開発を目指した四つの課題について話題提供をしていただきました。
最初に、柿渋・カキタンニン研究会会長の松尾が講演会および柿渋展示会の開催趣旨および研究会の概要の説明をしました。

次いで、最初の講演者として奈良県農業研究開発センターの濱崎 貞弘氏は「柿渋原料果実の生産向上に向けての課題克服について」と題して、柿渋原料柿の栽培を農家経営の観点から課題点を説明されました。さらに、柿苗の早期栽培方法や今後の労働力の確保、そのための省力化技術の重要性、また、柿渋の生産や消費・利用に関する公的な統計資料の不足をを指摘されました。
  

 続いて、京都府立大学の精華キャンパスの板井章浩教授は「渋柿の渋の抜ける、抜けないのはどうして決める?」という演題で話題提供されました。柿には渋柿と甘柿があり、多くの品種の中には、種子の有無や揮発性物質とは無関係に渋が抜ける品種と人為的な処理によって渋が抜けやすい品種と抜けにくい品種があること、そのメカニズム、原因等にについて講演されました。
  

3番目の演題としましては、「渋柿の渋み成分の悪酔い防止効果とサプリメント販売戦略」について島根大学生物資源科学部の板村裕之教授に話題提供いただきました。西条柿の歴史的なお話から始まり、「お酒を飲む前に柿を食べると悪酔いしない」メカニズム、さらには、西条柿のエキスを利用した「悪酔い防止製剤」(商品名:晩夕飲力)の開発と販売についてお話いただきました。
  

次は、基礎研究から離れて、実際に柿渋を利用した塗料を販売、利用されている田中直染料店9代目の田中直輔氏と同店で講師をしておられる加賀城健氏に「染料屋から見た柿渋の魅力と課題」という観点からお話をいただきました。
お店の歴史から、お酒を搾る柿渋染めした酒袋の利用や柿渋を使った型紙の利用、それから柿渋を染料化した商品の開発や柿渋糊を使ったアート作品の制作、柿渋の短時間固着剤の開発について詳しく説明されました。
つづいて、加賀城氏はその柿渋糊を巧みに使った色々な染色方法、実際の見事な、美しいアート作品となった布類、それらの講習会などについて紹介されました。
  

 最後に、国立国会図書館関西館文献提供課の依田紀久氏から「柿渋研究の情報基盤を考える:データベースの活用からみえるもの」という話題を提供していただきました。柿渋や柿に関連したどのような書籍や文献が実際に図書館にあり、どのようにしたら利用・調査できるかを優しく説明され、図書館の情報の発信や人の交流に寄与する役割とその活用の呼びかけがありました。
  

総合討論のあと、図書館の内部見学会と柿渋展示会での交流会をさらに実施ました。
 

柿渋展示会には17社となる、柿渋製造者、柿渋を利用したソフトドリンク、染物、工芸品やアート作品の製作者などから出展いただきました。また、奈良県の試験場からは、柿渋の原料ガキや渋・甘柿の様々な柿の品種を20種類展示していただき、柿の多様性に関して実物を見て学ぶ機会となりました。加えて、学術的な発表ポスターも5件展示していただきました。毛色の違うところでは、省力化の技術の代表として電動運搬車の展示もありました。
  
今回のイベントの成果は単に専門家の知識や技術を多くの一般市民に一方的に伝えるというものではなく、多くの新しい出会いがあり、異分野交流があり、意見交換・情報交換等を活発にしていただけた点にあると強く感じました。
 改めて、このような立派な施設でイベントをさせていただき、また色々とお世話いただきましたことを深く感謝する次第です。国立国会図書館関西館の皆様、展示会に出展いただきました皆様、参加者の皆様、本当に有難うございました。

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お知らせ

【市民講演会 及び柿渋展示会】無事終了しました。

「柿渋ニューワールドへの扉を拓く!!」 

~その魅力と課題、そしてエコ社会の再生へ~

 

■日時  平成281027(木)13:0017:15

■会場  国立国会図書館関西館 大会議室

 (住所)619-0287 京都府相楽郡精華町精華台8-1-3 

 (電話)代表:0774-98-134(資料案内)

 (最寄り駅)JR新祝園駅、近鉄・祝園駅よりバス

主催   柿渋・カキタンニン研究会・国立国会図書館  後援:精華町

プログラム

13:0013:15

 講演会の趣旨と研究会の活動内容および国立国会図書館と共催する意義

    松尾 友明 (柿渋・カキタンニン研究会会長) 

13:1513:55

 柿渋原料果実の生産向上に向けての課題克服について

    濱崎 貞弘(奈良県農業研究開発センタ- 加工科総括研究員)

13:5514:35

 渋柿の渋の抜ける、抜けないのはどうして決まる?

     板井章浩(京都府立大学大学院・教授)

14:3514:50    <休憩時間 (展示物の見学・意見交換)>

14:5015:30

 渋柿の渋み成分の悪酔い防止効果とサプリメント販売戦略

    板村 裕之(島根大学生物資源科学部・教授
15:3016:10

 染料屋から見た柿渋の魅力と課題

    田中 直輔(田中直染料店 9代目社長)   

16:1016:45

 柿渋研究の情報基盤を考える:デ-タベ-スの活用からみえるもの

     依田 紀久 (国立国会図書館関西館文献提供課)

16:4517:15   総合討論 

17:1518:00  見学・意見交換会 
18:0019:00   交流会(名刺交換など)

■参 加 費: 無料

■参加定員: 150名


チラシ:市民講演会&柿渋講演会チラシ20161027.pdf )

 
■講演会などの開催趣旨について

京都府南部は歴史的に「柿渋」の全国的に著明な生産地であり、清酒のおり下げや染色、塗料など日本人の生活の中で多種多様に利用されてきました。しかしながら、近年安定的供給が可能で、安価で耐久性に優れた石油由来の染料や塗料、プラスチック製品に多くは取って代わられてしまいました。ヒトや環境に優しい自然素材の重要性が再認識されてきました今日において、柿渋の生産・利用に関わる諸問題を検討して、高品質の柿渋を安定的に生産して、新規な用途開発を行い、京阪奈地域での起業、産業育成、果樹産業の活性化を目指すことは極めて重要であると考えられます。

 本講演会はこれらの諸問題に関してそれぞれの専門家に平易で解りやすく話題提供をしていただき、その後参加者全員で双方的に意見交換、技術交流を行うことを目的としています。また、今回は柿渋とカキタンニンの古典的な文献から現在までの新技術や科学的知識を幅広く調査・研究することがより一層今後の本研究会の活動を活発化する上で重要と考え、国立国会図書館の機能を十分に活用する方法を学ぶための機会としてもこの講演会を企画・開催することにしました。合わせて、当日は柿渋を使った様々な製品の展示と解説および国立国会図書館の見学も行います。

 柿渋は中世から近代日本の社会を支えてきた天然物質であり、柿渋の積極的な利用は市民に優しい、暮らしやすいエコ社会の再生にも繋がると考えられます。この物質の生産・利用を核として大都市とローカル地域間の人々の交流も促進でき、新しい社会的流動モデルとしての提案にもなるかと期待しております。高校生や大学生などの若い人にも参加していただき、この古くて新しい天然物質の生産、利用、文化に興味を抱いていただくことを願っております。


<京都府立大学地域貢献型特別研究事業(
ACTR)>

 柿渋・カキタンニン研究会会長 :松尾友明・鹿児島大学名誉教授

 事務局:京都府立大学精華キャンパス野菜花卉研究室内

        寺林 敏・京都府立大学生命環境科学研究科教授